知り合いから聞いた話です。

当時、まだエアガンの規制が今ほど厳しくなく、
猿の害への対策が今ほど整っていなかったことから、
サバイバルゲーム関連の雑誌に、
自治体や商店からの『猿撃退求人広告』なるものが出ていたことがあったそうです。






猟友会が駆除するには法令等で限界があるので、
エアガンで死なない程度に痛い思いをさせて里から遠ざけよう、
というのが狙いだったようです。

それで、知り合いのAさん(当時大学二年生)は、
実際にそれに仲間数人と応募したそうなんです。

内容は確か、
夏休みの3日間里周辺をパトロールして逐一猿を追い払うと言うもの、
謝礼として日当4000円と昼食が出るというもので、
自力で通える人限定だったと聞いています。

ガイド兼お目付け役として
地元の猟友会メンバー一人が同行していたとか。


現地に赴いたAさんたちを含め、
応募者は10人前後。

猿のよく出るポイントと通り道になっていると思しき場所を教えてもらい、
連絡用の信号弾兼威嚇用のロケット花火。

半分は猟友会のお爺さんと一緒に周辺を巡回、
残りは二人一組で猿の出没ポイントで待ち伏せ。

一日目、Aさんたちは午前中周辺の巡回を行い、
午後には待ち伏せ組みと交代するというシフトでした。

巡回し初めて直ぐ、
小規模なグループを発見して攻撃、
驚いた猿たちは簡単に逃げ散ったそうです。

昼近くに、
Aさんたちが巡回している近くの待ち伏せポイントから
ロケット花火が上がりました。

事前の打ち合わせで、
定時連絡(異常無し)なら1発、
応援要請なら2発ということになっていたそうなんですが、
そのときあがったのは2発でした。

駆けつけてみると、
かなり大規模なグループがフェンスを乗り越え
畑へ入り込もうとしているのを、
待ち伏せ組みの二人が防いでいるところでした。





直ぐに加勢してその場は撃退できたそうなのですが、
問題はその後でした。

午後、
Aさんと仲間のBさんが配置されたのがそのポイントでした。

緩やかな斜面の途中に畑を守るためのフェンスが設置され、
フェンスと木立の間は約20メートルほど。

そこへ幾度となく大規模なグループが侵入を試みてきたそうです。

はじめのうちは

「逃げるやつは猿だ!
逃げないやつはよく訓練された猿だ!」

などと冗談も交えて撃退していたAさんたちも、
死なない程度とはいえ
痛みにひるまず向かってくる猿が不気味に思えてきて、
応援要請で応援が駆けつけると
猿たちは引き潮のごとく逃げ、
応援が去ると再び来襲するという具合。

そうしてようやく一日目が終わり、引き上げるとき、
AさんとBさんは畑の中に立つ小さな祠を見つけたそうです。

梅の木の影に立つそれは、
特に禍々しいものを感じさせるわけではありませんでしたが、
一緒にいたBさんの

「案外、これが目当てでここに押し寄せてたりして」

との一言に、
なんとなく嫌な気分になったそうです。

それで、帰り際に例の猟友会のお爺さんに尋ねたところ、
祠のいわれは詳しくは判らないが、
どうやら猿の神様か何かを祀っていること。

以前からあの場所にはよく猿が侵入しており、
そのためにフェンスを設置したところ、
猿が里に侵入する頻度が激増した上に
粗暴になってきたとのことがわかりました。

Aさんは、その場で断りを入れて
残り二日のバイトは断ったそうです。

あの祠は、
猿たちにとっての聖地みたいなものだったんでしょうか?