もう何十年も前の俺が大学生だった時の体験

夏の夜、実家の自室で普通に寝ていた。

熱帯夜で窓は開けてたが
網戸は閉めている状態だった


突然すぐそばでハトが鳴くような

「クックー、クックー」

て声が聞こえて、

「あれ?ハトが入ってきた?
でも網戸は閉めてるしおかしいなー」

と思ってパッと目を開けた


すると自分のもうホントに目の前、
鼻がひっつきそうな距離に
髪を振り乱した落ち武者らしきやつの生首がいて、
苦しそうな表情でこちらを見ていた

ハトの鳴き声だと思ったのはそいつが発するうめき声で、
肉の腐ったような匂いもした

「ぎゃあああ何だこいつはあああ!!」

と思ったが
なぜか身体が上手く動かなかった

10秒か20秒後か、
う…う…とうめきながら
そいつはスーっと水平(俺の足元方向)に移動しはじめて
腰のあたりに来たところでフッと消えた

途端に身体が動くようになってすぐに起き上がり
電気をつけて、汗びっしょりの状態でゼェゼェと息を切らし

「なんだ今のは…」

とあたりを見渡した

で、自分でも何でそうしたのか未だに分からないのだが
何故かすぐにまた電気を消して寝てしまった
(普通怖くてもう寝れないと思うのだが自分でも分からん)

しばらくすると
突然、両足首に激痛が走った

俺はてっきりさっきの奴が噛みついてきたのかと思って、
身体は動かなかったが頭だけは動いたので足元を見てみると、
案の定さっきの落ち武者の生首が
足元の宙に浮いてこちらを見ていた

そして足元の下の闇の中から
真っ白い腕がにゅうーっと出ていて
俺の足首をつかんでいた

その力の強いこと強いこと、
骨折するかと思うほど強く握られて、
下のほうに俺を引っ張りだした

どこかに連れ去られるのかと思った俺は
南無阿弥陀仏!南無阿弥陀仏!と念じてた

経はそれくらいしか知らなかった…

それからのことはよく覚えていないが
とにかく気が付くと朝で、
身体が半分くらいベッドの下側にずらされており
足が曲がった状態だった

そして両足首にはくっきりと掴まれた跡のアザがあって、
それは一週間くらい消えなかった

アザは俺の親も目撃しているし
身体半分ずれた寝相になったのは
後にも先にもその時だけなので
あれはやっぱり本当にあったことなんだなぁと思っている