私の家の廊下の突き当りが袋小路になっていたのを、
定年になったばかりでヒマを持て余している父が、

「スペースがもったいないので物置にする」

と言い出して、
一人で工事しはじめました。


何かに取りつかれたように父は作業をし、
わずか一日で上下二段で扉つきの物入れが出来ました。

翌日家に帰ると、いるはずの父が見当たらなく、
また物入れの作業中かと思い廊下へ出てみると、
物入れの扉には新たに南京錠が取りつけてありました。

結局その日父は帰ってこず、
翌日の晩になりました。





不安になった母に、

「物入れのカギを壊して中を見てくれ」

とせがまれ、
私も父がカギをつけてまでしまいこんだ物が気になり、
丁寧に南京錠の掛っている金具ごと取りはずしました。

中には薄ら笑いでうつろな目をしている父が、
体育座りでこちらを向いてました。

なぜ外から鍵が掛っていたのか、
なぜ父が中にいたのか?

残念ながら、
その日以来ボケてしまった父から答を聞くことが出来てません。

今日も父は物入れの下段に入りこんで、
楽しそうに宙を見ながら笑っています。