埼玉県A市の岡という場所に日本橋と言われる橋がある。線路の上にかかるなんて事のない普通の橋なんだけど、近隣の住人から『幽霊橋』と呼ばれている。
ある夜、友達の母親は仕事が長引き夜中に職場を出た。そうだ街灯が少ないので足早に家までの最短距離を急いだ。すると道の前方がうっすらと明るくなっていたそうだ。
最初光を見たときは車が向かって来たんだなぁと思い気にせずに歩いていたらしい。若干うつ向き加減に歩いている時にふと車とすれ違わない事に気付いた。
その道は一本道で横に曲がる場所は一切ない。それに気付いた時に急に怖くなったらしく恐る恐る顔をあげたそうだ。
車はやはり来ないがまだうっすらと明るくなっていたよく見てみると地面というかその場所が光っているらしい事に気付いた。だが何が光っているのかはよく分からない。
この段階で恐怖があったらしいが道を引き返すのもイヤなのでそのまま歩いて行った。段々と近づいて行く内に何やら地面の当たりがユラユラと揺れていた。
そこはちょうど息子(俺の友達)に聞いた幽霊橋だった。恐怖に駆られていたが橋を通らずに帰るのも来た道をほとんど引き返さなければいけなくなる為に意を決して進んだ。
そして橋を見渡せる位置(橋の手前は軽い上り坂)にまで来た時に信じられない光景を見た。
地面が揺れていると思ったモノは芒だった。それも橋の上にだけ咲き乱れる様に芒に埋め尽くされていた。橋はアスファルトで出来ており、芒どころか雑草すらほとんど生えてはいない。
思わず橋の前で立ち尽くしてしまい目の前の風景に唖然とするだけだった。
すると橋の中央に何やら黒い塊がモゾモゾと動いていた。良くないモノだとすぐに気付いたらしい。だがどういう訳か目をどうしても逸らせず注視していた。
すると黒いモノが突然ニューっと細長くなり、何かを型どり始めたグニグニと動きながら型どったモノはちょうど人の背格好みたいな感じだったらしい。
さらに注視しているとその人の様なモノがゆっくりと振り向く様に反転していった。
足が震えていたが逃げる事はおろか目を瞑る事すらできなかったそうだ。そして黒いモノが完全にコチラを向き、近づいて来た瞬間弾かれる様にその場所から逃げ帰ったそうだ。
次の日友達の家に遊びに言ったらその話をされ、最後にその黒いモノについて語ってくれた。
『本来人の頭があるであろう所には何もなく、代わりにちょうど腹の辺りに顔があった。顔の右半分が長い髪で隠れていた女だった。ドス黒い肌で細い目だけがギョロギョロと動き回っていて、自分を見つけるとニヤ~っとさも嬉しそうに笑った。そして手と思われる所には鎌が握られていた』
胡散臭そうに聞く俺達を他所に怯えた様子で話していた。最後に暗くなったら幽霊橋には近づくなと釘を刺された。もちろんその後外に遊びに行くといって幽霊橋を見に行ったが単なる橋で何も見ることはなかった。
以上で終わりだけど事実かどうかはかなり怪しい。何故なら幽霊橋と名付けて出るぞって噂流したのは俺だからな。気付いたら近隣住民や周りの学校の生徒ですらそう呼び出す始末。
ただ友達の母親はマジでビビりながら話してくれたもしかしたら本当に出る場所だったのかも知れないね。
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