10年くらい前、
私が害虫駆除の営業をしていた頃の怖い体験です。

その日に伺う予定だったお宅は、
以前にウチでシロアリ消毒をしているお客さまでした。




私は訪問する前に前回の調査表を確認すると、
備考欄に『ネコ屋敷注意!』と書いてありました。

色んなお客がいるので、私は

「ああ、そういうタイプのお客さんか…」

と思った程度で、
あまり気にしていませんでした。

約束の時間になり、
私はお客さまのお宅に伺いました。


外から見る限りでは、
築10年も経っていない、
その辺りでは割と大きな2階建て物件です。

ただ手入れしている様子はなく、
庭は荒れ放題でした。

インターホンを押すとすぐに家主が現れました。

ひと目でお気の毒とわかる感じの猫ババアでした。

(現在の訪問販売法には明らかに抵触するであろう、
正しい自己判断を行うことが難しい方でした>猫ババア)

玄関を開けた瞬間から既に、
動物を飼っている家の特有の臭いがしました。

家の中は雑然としていて、
床は足が張り付くほどにベタベタしていました。

さらに強烈な臭いのため鼻で呼吸はできず、
目が痛いくらいです。

部屋のあちらこちらにネコがいます。

通された部屋に5-6匹、
途中にも2-3匹いたのに加え、
気配や鳴き声を入れると裕に倍以上はいる感じです。

猫ババアがお茶を入れてくれましたが、
飲む気にはなれませんでした。

私は長居は無用とさっそく仕事に掛かりました。

作業衣に着替え床下に潜ります。

…ネコは死ぬとき姿を隠すって言いますよね?

どこに消えると思います?

床下にいました。

防毒マスクのおかげで臭いこそわかりませんが、
たぶん想像を絶する臭いだったはずです。

だってそこには、
ミイラ化・白骨化したものから、
まだ新しい死骸・腐り掛けのものまで、
確認できるものだけでも14匹のネコ達がいたのですから…

私はすぐにでも逃げ出したい気持ちでしたが、
床下の状況を猫ババアに説明し、

「このままでは不衛生だから、
もう一度しっかり消毒をした方がよい」

旨を伝えました。

すると意外にも猫ババアは

「ネコ達が可哀相、すぐに消毒してあげて」

と再契約の運びになったのです。

そこで受注のため会社に連絡すると、

『死骸の始末はお前がしてこい、
でないと工事は請けられない』

と言われました。

私が床下のネコの数を正確に数えることができたのは、
一匹ずつ死骸を集めて回ったからです。

以上、茨城県H市の『ネコ屋敷』でした。