私の出身地は山陰地方の山里なのですが、
猿の化け物の話が伝わっています。


私の一族は、
応仁の乱が起こったくらいの時代にどこからかやってきたそうです。



川が流れる谷間を開き、
市を開いて生計を立てていました。


しかし、そこには猿の化け物がおり、
山に分け入った者達に血を浴びせ、
病気にしてしまうのです。
病を得た者達は無気力となり、
今で言う引きこもりのようになったそうです。


考えた末、
一族は一つの山に社を建て、
猿の化け物を祀ることにしました。


実際には封印のようなものだったと思われます。


とにかく猿の化け物は山に封じられ、
社の山は祭の日以外入山を禁じられました。


現在、里は過疎化の煽りを受けて祭は廃れつつあります。
月に一度開かれていた講も回数が減ってきました。


目に見えて社が蔑ろにされ始めたころ、
里の数少ない若者の何人かが姿を見せなくなりました。


精神を患って療養中という噂です。
私の兄も重度の譫妄状態となり、
離れからめったに出てきません。


単なる引きこもりなのかもしれませんが、
祭事が滞りなく行われていた時分にはこんな事はありませんでした。


それに、
「良くない感じの晩」に、
里に猿が降りてきて徘徊しているという話も聞いています。


口伝ですが、伝承によると猿の化け物は足跡を残さず、
常に血を流しているそうです。


猿の姿をしているが、正体は違うとも聞きました。


まとめにあった『ヒサルキ』に似ています。


祭を怠ったため、
山から降りてきてしまったのかもしれません。