俺が小学生だった頃経験した話。
当時、俺は怖い話が好きだった。
どこか遊びに行くときはいっつも『怖い話集!』みたいな本を持って行って、
怖い話をするのが好きだったわけ。
まあその怖い話の本自体、
小さい子向けって感じで、
語る側の俺もビビらず話せたんだ。
んで五年生の時かな、
夏休みに母方の祖父母の家に遊びに行ったんだ。
住んでるとこから遠いから、
旅行って気分で楽しく、
勿論いつもの本を持って行った。
仲のいい親戚の子も来てて遊んでた。
楽しかったなあ。笑
そして昼飯を食べた後、
親戚や家族の揃ってる前で、
俺はとうとう怖い話をした。
うちの親戚家族はノリが良いから、
ガキの話にも寛容だったわけよ。
話は、本に載ってた『ババサレ』。
深夜、鎌持ったお婆さんが命を取りにくるって話な。
有名なんじゃないかな…?
ただこの話を聴くと、
夜聞いた人も経験しますよ。ってオチの話なんだ。
ノリノリで話し終えた俺は、
そこのお婆ちゃんと叔母さんの言葉に動揺してしまった。
「まあ懐かしいなあ」
「何でババサレ知ってるん?」
あと母もババサレを知っていたらしい。
(母方の親戚が集まってるから関連があるのかと思ってた)
そこでお婆ちゃん、叔母さん、母に聞いてみると、
その母方の祖父母の家、というかその地方は、
ババサレの発祥の地らしいんだ。
昔からババサレって名前で知られてる妖怪?幽霊?で、
祖父母家の近くにK山っていう高い山があって、
そこを2秒で上り下りするって伝説があるらしい。
驚きだったよ。
まさか東京のどっかの会社が出版した胡散臭い怖い話本の胡散臭い話が、
まさか婆ちゃん家近くで語られてる話なんてな。
そんで叔母さんがこう言われた。
「まずあんた(俺)のとこにはババサレ来たん?」
俺の家は祖父母家とは違う県だし、
初めてババサレを知ったのも俺の家だし、
今まで来た事なかったんだよ。
だから安心してた。
けれど叔母さんと母に言われたんだ。
ここはババサレと縁があり、
経験してる家は多い。
この土地に来てババサレを話すという事は、
リセットされ改めて俺のとこに来る可能性が高いと。
現に叔母さんと母が幼い頃も、
窓が叩かれたらしい。
婆ちゃんにもそう言われた。
俺とその仲の良い親戚の子は焦ったよ。
その子も、俺から初めてババサレを、
しかも縁のあるこの地で聞かされたからな。
ババサレ来るじゃん!って。
夜は婆ちゃん家に泊まる俺家族と仲の良い子家族だけで、
他の親戚は日帰りになる。
しかし一度経験した者には現れないため、
母、親戚の方の母(前述の叔母さんの事)は除外、
どちらの父も元々仕事で居ないため、
事実上ババサレの標的は俺と仲良し子だけになったんだ。
周りは夜まで、びびってる俺らを心配したり、
今日で死んじゃうねー!なんていじってくる人も居て、
全体的に緊張感はなかったものの、
俺達二人だけは怯えてた。
ただ夕方、夜になるにつれ、
先ほどの叔母さんや母も
「どうしようか、今晩は一緒に寝るか?」
なんて言い出すもんだから、
俺の焦りは増していった。
しかし、本にも書いてあり、
親戚にも言われてた事だが、
ババサレが来たとき対処方法があるんだ。
もしノックされたら、
ババサレを三回唱える。
だから周りにも
「大丈夫、唱えたら無事だから!」
って言われて、
少しずつ安堵感で回復していった。
(親の時も唱えてたらしい)
そうこうしてる間に夜が来た。
夜いつも通り晩御飯を食べ、風呂に入り、寝る支度をした。
その間も緊張感はあんまなかった。
たまに感じたが。
だって絶対的な対処方法はあり、
しかもノックされるだけで出くわす事はない。
確かにビビる必要も、
ましてや信じなくていいって思いだしたし、
元々その親戚はゆるいから緊張感もなかったわけ。
んで就寝する時。
母や祖父母は客間?の二階で寝て、
俺と仲良し子とそいつの母(叔母さん)の三人は夜更かししてゲームしてたんだ。
ゲームキューブな。
それは寝るとき、
さすがに危なく心配だと叔母さんが一緒にゲームして寝ようと提案したためだ。
そこそこゲームも飽きてきて目が疲れ、
俺達は
「もう来ないんじゃね?」
なんて強がって、
三人が布団の方に移動しようとした時、
「コンコンコン」
明らかにノック音。
親が意地悪してるのかとも思ったが、
皆二階に居る。
降りてきた気配はない。
なんでノック音が聞こえたかと言うと、
俺ら三人がゲームしてた居間と玄関はすぐ隣で、
昔の家だから壁も薄く、
すぐノック音だと理解できたんだ。
三人は目を丸くし、
目を合わせた。
『来たんだ』って、
三人でテレパシーみたいに通じ合った感覚。
まあそこは冷静に「ババサレ」を唱えた。
オチなくてすまんが。
唱えてからは何もない。
んで、そのまま寝た。
次の日、叔母さんと仲良し子とも話したが、
やはり昨夜の出来事は夢じゃなかった。
ちなみに二階の母や祖父母は、
上がってからすぐ寝てたらしいんだ。
今でも考える。
あのドアの向こう側にババサレが居た事。
ノックするということは、
明らかに俺達は認識されてたということ。
そんなわけ分からない者と壁一枚だけで遮られてたってのが、
実際出くわすより俺達に恐怖を与えてた。
そして、どっかの本屋で買ったくだらない話が、
地元と繋がってたという事に、
そしてババサレを俺がチョイスした話した事に、
奇妙な縁を感じた。
その奇妙な繋がりと、
もし開けてたら?なんて考え出すと、
今でも鳥肌が立つ。
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