その日、終電に乗り遅れて、カプセルホテルに泊まった。

部屋のカプセルの大きさは、縦幅190、横幅恐らく100㎝ないくらい。


風呂に入った後、ビールを飲んで、涼んでからすぐに寝た。



寝てしばらくすると、妙に体が圧迫されて寝苦しい。


目を開けてびっくり、俺の隣で普通にオッサンが眠ってる。

この狭い部屋の中で成人男性が二人も入ってるのだ、
寝苦しくて当たり前。


当然のごとく、おもいきり驚いた。


酔っ払いかホモの痴漢が侵入して来たと思ったからだ。
(この手のホテルはホモの痴漢が横行してる)


「うわあああっ!」


あわてて部屋を飛び出して、


「この野郎!!」
と振り返って部屋を覗くと、誰も…いない。


「あれ?」


今の感覚はあまりにもリアルだったし、
寝ぼけてた訳じゃないよな…


妙な違和感はあったものの、明日も早いし、勘違いだ、
寝ぼけたんだと自分を納得させて、もう一度眠る事にした。


しばらくして後、また同じ圧迫感。
びくっとして目を開けると、また同じオッサンが隣で寝ている…


二度目は怖ろしいくらい落ちついて、オッサンから目を離さず部屋から出て、
部屋の中にちゃんとオッサンがいることを確認し、深呼吸した上で叫んだ。


「おいコラ!!人の部屋で何しとるんじゃっ!!」


オッサンが目を覚まして、こっちを向いた。


オッサンの顔はごく普通、何処にでもいそうな顔。
表情は凄く眠たそうだ。


その時、他の部屋から
「うるさいよ、静かにして!!」
と、クレームが聞こえた。

思わず俺は、しまった、ここは寝室のフロアだったと、


声がした部屋の方向に対して、あわてて
「す、すいません!!」
と返事をかえした。


その一瞬、部屋から視界を外してしまったのだけれども、
部屋に視線を戻したら、オッサンはまた消えてしまっていた。


さすがにゾッとしてしまって、その日はカプセルで寝るのは止めて、
雑魚寝専用の相部屋で眠る事にした。


三年前の話です。


ちなみに場所は、新宿のカプセルホテルです。
場所は歌舞伎町、西武新宿駅のホーム沿い。


部屋番号は教えません。
ヒントを言えば、その部屋には鏡がなかった。