蛇神様が死ぬほど怖いんだ。

かつて俺は、蛇神様の社で祈った。クラスのK、S、H、の3人の死を。


俺を執拗に、脅し、殴り、蹴り、辱しめる、この3人の死を。蛇神様の社は、人が足を踏み入れない、荒れ果てた社だ。

その社の狛犬は、両方とも首がない。稲荷神社と同様に、願を掛け、祈ればいい。

ただし祈るのは深夜だけ。祈っている所を、人に見られてはいけない。

そして、願望成就の暁には、やはり深夜に、犬の頭を奉納する。俺は深夜、K、S、H、の死を祈った。

K、S、Hは、順当に死んでくれた。傷害、交通事故、火災、で。

俺は野良犬を餌で手なづけ、ナタを頸部に叩き込んで、頭を落とした。死骸は埋めた。

深夜、蛇神様の社へ犬の頭を奉納した。闇のなかで、蛇神様の喜びを感じた。

俺はK、S、H、の3人から解放された。この喜びと感謝は、野良犬の頭一個くらいじゃ埋め合わせられない。

さらに2匹の野良犬の首を刎ねた。犬が四肢を痙攣させて絶命するとき、俺の爪先から頭部にむかって、電撃のような喜びが駈け上がった。

死骸は埋めた。深夜、ふたたび蛇神様の社へ犬の頭を奉納した。

闇のなかで、蛇神様の強い喜びを感じた。俺はそれからも野良犬を殺し、その頭を奉納し続けた。

闇のなか、凄まじい臭気のたちこめる蛇神様の社に、新たな犬の頭を奉納していると、社の壇上に女が立っていた。白装束に長い髪、細い眼、薄い唇、白い肌。

ときおり薄い唇から、二つに割れた細く小さな舌が出入りする。俺はそれが、蛇神様だとわかった。

蛇神様は、なにも言わずに俺を見ている。俺は理解した。

もう犬は飽きたのだ。俺は子供を菓子で手なづけ、ナタを頸部に叩き込んで、頭を落とした。

死骸は埋めた。深夜、蛇神様の社へ子供の頭を奉納した。

闇のなかで、蛇神様の強い喜びを感じた。これまでに5人の子供の頭を奉納した。

やがて発覚し、逮捕されるだろう。深夜、布団の中で眼を閉じると、闇の中に蛇神様が立っているのが見える。

蛇神様は、俺が、俺自身を奉納するのを、舌なめずりをして待っている。