年始に親戚一同が集まった時に、
祖母の一番上の兄さんが昔聞いたっていう話をしてくれた。

・悪いことをすると箱に魂を取られ、別の人の魂を入れられてしまう。
・箱に魂がいっぱいになると、そこから新しい人間が生まれてくる。
・↑は山の神様(?)の食べ物になるか、従者(?)になる。
でも、その箱がどういうものかは知らない。


この話を聞かせてくれた人が、教えてくれなかったとのこと。


コトリバコ系オカルト話キター!?と内心嬉しくなった自分は、
従兄弟と詳しく話しを聞いてみた。

戦前の話。


曽祖父はとある職人で、家族と二人の弟子とお手伝いさんと住んでた。


家族構成は、


曾祖父、曾祖母、娘・息子(五人兄弟)、曾祖父の弟(Mさん)、
弟子は二人(FさんとYさん)、お手伝いさんは一人。


ある日、曾祖父の友人Aさんが、二人の姉弟を連れてきた。


姉弟は関西出身で、住み込みの仕事を探していたらしい。


二人とも手先が器用で、何か手に職をつけたいと考えていたので、
曾祖父の弟子にどうよとのことだった。


曾祖父は先にいた弟子二人を近々独立させようとしていたところだったので、
丁度いいと預かったらしい。


この姉弟は仕事は出来たんだけど、おかしなところがいくつかあったらしい。


変わった文字しか書けなかったり、神社や寺にいくことを極端に嫌がったり、
家族や生まれ育った土地のことを何一つ話さなかったり。


だから曾祖母は、姉弟は差別されてしまうようなところの出身(半島とか大陸系)
なのかもと考えていたみたいだ。


その姉弟が話してくれたってのが、上の箱の話。


そんなこんなで5~6年一緒に暮らした頃に、戦争が始まってしまった。


曾祖父の仕事はなくなるし、Mさんは徴集されるし、
子供達も疎開だ何だとなって、
今までのように暮らすことが難しくなってきた。


そんな時、姉弟の親族を名乗る人から手紙がきた。


一度家に帰って来い、という内容だったらしい。


今までそんな手紙は一度もきたことなかったから、曾祖母はびっくり。


姉弟は泣いて嫌がったんだけど、やはり理由は言わない。


でも帰さないにもいかないし、戦争が終わったら迎えに行くから、
と約束して家に帰した。


その後、家に無事についたと姉弟から手紙が届いた。


もう会えません、今までありがとうございました、という内容だったらしい。


なんで?と疑問に思ったんだけど、
同時期にMさんの戦死の知らせが届いてそれどころではなくなってしまった。


Mさんが所属していた部隊(?)の人から、遺品と書きかけの手紙が届いた。


戦場の辛さと、家族の安否を気遣う内容と、
それと、あの姉弟が夢に出てきて、
今までお世話になりましたと言われた、と書かれていた。


Mさんには姉弟のことは言ってなかったので、
偶然にしてはヘンなタイミングだと思ったらしい。


その後、戦争で家が焼けて土地も手放した。


それでも約束どおり姉弟を迎えに行こうとしたんだけど、
手紙に書かれていた住所は存在しなかったらしい。

子供達も結婚して孫が出来た頃、
曾祖父が脳溢血で倒れ、二週間後に帰らぬ人に。


倒れる前に、しきりにあの姉弟が夢に出てくると言っていたらしい。


それから数十年が経って、元弟子のFさん、Yさんも亡くなった。


この二人は世話になった曾祖母に手紙を残していて、
内容はあの姉弟のことだった。


最近夢に出てくる、泣いて謝っていた、とかそんな内容。


曾祖母は現在104歳。


最近痴呆気味で、よく昔の話をしてて、
どうも姉弟を無理矢理実家に帰した後悔しているみたい。


それで今、親戚連中がこの姉弟を探してみようかと計画中らしい。


なんか探偵雇うかとか言ってる。


手がかりらしい手がかりなんてないし、
半世紀以上前のことだからムリだと思うんだけど。


話を聞いていて姉弟が非常にうさんくさいことと、
死ぬ前に必ず姉弟の話が出てくることに怖くなってしまった。