幼少の頃、
九州のある県に引っ越した直後に見た夢の話。

引っ越して、
その県にある母の実家に住むことになった。
もう実家の主であった祖母は他界しており、
家はすごく汚かった。

家族三人(兄と母)で
その家の応接室に川の字になって夜寝ていたとき、
すごく変な夢を見た。

越してきたばかりであるこの家の応接室に夜、
爺さんが現れて変な儀式を始めるという夢だ。

「#######(変な呪文)オキヨよ出でよ!!」

と唱えると、
変な日本人形が出現して家を掃除してくれる。


今思い出してもわけが分からない夢だった。

昔見た夢なんか忘れてしまって当然だと思う。

でもこの夢だけはぼんやりと覚えていた。

高3の夏の時、
越してきてもう十年も過ぎたある夜。

兄の友達が遊びに来て、
三人でゲームをしていた。

ゲームは応接室に置いてある。

で、ゲームもあらかたやって、
退屈しのぎにその友達が、
応接室にあるいろんなものを手にとったりして眺めていた。

何年も暮らしてきた俺たち兄弟は、
今までその部屋に置いてある物になんて
一度も興味を持ったことが無かった。

部屋を物色している友達を傍らに、
その時俺は兄と二人でゲームをしていた。

友達が言う。

「おい、この部屋に置いてある日本人形には、
全部名前が付いてあるぞ」

と。

ゲームに夢中であんまり聞いてなかった。

「え、確かに三体置いてあるけど、
まさか名前が付いてたなんてねえ…」

って、兄が答えた。

「ああ。ほら、御雪、御菊、御清って」

そのときあの夢を思い出した。

御清ってあのオキヨ?

何でかは分からないけど、背筋が凍った。

その時はもうゲームどころじゃなかった。

あの夢は、一体なんだったんだろう…。