小学生のときの移動教室で、結構大きな神社の隣にある旅館に泊まったときのこと。

自分たちの部屋は二階の角部屋で、一つしか無い小さな窓の向こうにはすぐ隣の建物の壁が見える、日の当たらない、昼間でも暗い部屋だった。
同じ班の子たちは少なからず自分たちの泊まる部屋に不満を持っていて、余りその部屋には居たがらず、到着したばかりの興奮もあって、何人かで他のグループの部屋に押し掛けたりしていた。

私と友人の一人は部屋に残って二人で話をしてた。彼女は窓に背を向けていて、私は彼女と向かい合う形で座っていた。

話が盛り上がって二人で声を上げながら笑っているとき、ふと強い視線を感じて私は窓の方を見た。

男の子と思われる子供が一人、窓に額と掌をくっつけて部屋の中を覗いているのが見えた。

私は小さい頃からそういうものを見てしまう方だったけど、やっぱりそれなりに驚いて、友人に「ねえ、窓の外に誰か居る」と言った。

友人が窓の方を振り返った瞬間、窓の方でガシャーンと音がした。物怖じしない友人は直ぐさま窓に駆け寄って勢いよく窓を開けた。

私も近付いて下を覗くと、さっきまで其処についていた筈の編み戸が下に落ちていた。

男の子の姿はもう見えなかった。編み戸が落ちたことを旅館の人に伝えた後、友人と二人で「何だったんだろうね」なんて言いながら夕食を食べた。

食べ終わると旅館の人がマイクでお風呂の説明をし、最後に「お風呂の後に怖い話をします。聞きたい人はロビーに集まって下さいね」と言った。

どうやらその旅館では怖い話をするのが恒例になっているようだった。入浴を済ませた後、私と友人は興味本位で話を聞きに言った。其処で語られたのはこんな話だった。

隣の神社では昔、無理心中があった。深夜の神社で、貧しい両親が小学生の男の子と幼い女の子を薬で眠らせて絞殺した後、二人とも自殺した。

翌朝家族全員の遺体が発見された。其処までは作り話に有りそうな話だなあと思いながら聞いていたけど、続きを聞いてぞっとした。

こんな風にたくさんの子供が泊まりに来ると、賑やかさに惹かれて、時々、男の子が窓に張り付いて、部屋の中を覗いていることが有ります。