2年間付き合ってた彼女にフラれて落ちるに落ちてた俺は、
親友Kを付き合わせて現実逃避の山登りをした。

澄んだ空気とか綺麗な景色とかを見て、
とにかく現実を忘れたかった。
突発的な思い付きだったので
山登りに関しては全く無知で、
ちょっとした飲食物と適当なものしか持って行かなかった。

山の途中まで車で行ってそこから歩いた。

上に行くほど気温が下がってきた。

大した服も着てなかった俺らは
寒みー寒みー言いながら登った。

そんでしばらくすると雨が降り出した。


本当に無知だったので知らなかったんだが、
山って雨が降りやすいらしい。
(あとから常識だバカ!と親父に怒られた)

雨はどんどん強くなって
本当に俺らは凍えてきた。

やる気もなくしどうしようかと話していたら、
人影が見えた。

その人はいかにも田舎な格好したおっさんで、

「こんな所でどうしたー?
あっちに小っさいけど小屋あるから来いよ」

みたいな感じで話しかけてくれ、
俺らは助かった!と思った。

そんでちょっと歩いたとこに廃墟みたいな小屋があって、
中に入るとおっさん

「すぐ戻るから待ってろ」

って言って雨の中どっか消えた。

で、タオルで濡れた体拭きながら一段落…と思ったが、
親友Kの様子がどうもおかしい。

顔が青ざめてる。

小便でもしてーのかとか思ってどうした?って聞いたら、

「なんかここヤバい。わからんけどヤバい」

とか言い出す。

「何が?」

って聞いたが、

「わかんないけどヤバい。もうここ出よう」

って言って、
バカ、すげー雨だぞ!
って言う俺の腕を強引に掴んで外に出た。

外はやっぱりすごい大雨だった。

だけど変だった。

目で見ると
かなり雨が降っていてザーザー音もするのに、
体には一粒も雨が当たってない。

この違和感に気付いた瞬間、
俺もサーッと鳥肌が立った。

そんでうわああああってなって、
その後はもう無我夢中で走ってとにかく斜面を駆け下りた。

あのおっさんが追いかけてくるんじゃないかと本当に怖かった。

ここら辺詳しくは覚えてない。

気付いたら車乗って山を降りてた。

親友のヤバいって言う声と
雨の違和感は今も忘れられない。

トラウマです。

よく考えたら小屋があるのも変だし、
あのおっさんは何だったんだろう。

それから、
あとからKに何がヤバかったか聞いてみたら、
小屋はもう全体がヤバくて、
おっさんも会ったときからゾクッと変な感じがした、
目がおかしかったと言ってました。

ちなみに俺は勿論Kも霊感はないです。

Kがいなかったら危なかったのかと思うとまた怖い。