大学の実習で山の奥の寺に1週間泊まったんだよ。

他の民家まで車で1時間。

脱走してコンビニとかマジ無理なくそ田舎。

まあ、どの道斜面の草刈りとか枝払いとかで疲れて、
夜はすこぶる健康的に早寝ですよ。
死神みたいな鎌振りまわすのは面白かった。

夜は夜でY談したり、
トランプしたり、
女子の風呂覗きに行ったり。

で、最終日も近くなった日のこと。

樵のおっちゃんが見せてくれた木の上り下りがカッコよくて、
仲間内4人で盛り上がったんだ。


杭?とロープでさっさって昇って、
それで頭を下にして降りるやつ。

それでさっさと割り振られた仕事終わらせて、
実習所の納屋からその道具持ちだして
チャレンジすることにしたんだわ。

先生に見つかったら怒られるから
ちょっと離れたところで。

友人は血液型的に、
A:B:ABにしとく。

ちなみに自分はOね。

4人であれやこれや試しながら
杉だか檜だかの木に登ってたんだよ。

昇るのは結構できるんだけど、
頭下にして降りるのが難しくて。

というか木の上で回転自体がむずい。

B、ABはわりと早くできたんだけど、
自分とAがなかなかできなくて、
二人にアドヴァイスされながら頑張ってようやく出来たんだ。

それでできたのが嬉しくて、
皆してスパイダーマンみたいに
登ったり降りたりを繰り返してたんだ。

ちなみにそれぞれ別の木に登ってた。

で、はしゃいでたら
突然Aが持ってた杭を木に叩きつけたんだよ。

なんだよってびっくりしてそっちを見ると、
すげーびびった顔で必死に指を口に当てて
黙れってジェスチャーしてきたんだよ。

訳わかんなかったけど、
一応うなずいておいた。

そしたらAが手に持っていた杭で
下の方を指したんだ。

なんだよって顔を上げると、
うす暗い森の中を動く白い物体があった。

普通影とかでちょっとは暗くなるはずなのに、
それだけ紙みたいに真っ白だった。

大きさは2~3mくらい。

なにかが布を被ったような感じ。

でも、前を見るための穴とかもないし、
それに歩き方が妙なんだよ。

歩くと多少揺れるじゃん。

でも、それがなくてすーって滑るように動くわけ。

足もとの悪い山の中をだよ。

全員木の上にいたから逃げようもなくて、ガクブル。

自分とABなんて逆さになってたから血の気引きまくり。

Bはちゃっかり上の枝の所に腰かけてたな。

やがて白いものが真下に来て止まったんだよ。

それで上半身を倒すような感じで、
下に置いておいた自分たちの荷物をじっと見はじめた。

これは気付かれたなって思って、
とにかく上を見るなと念じてた。

実際には短い時間だったかもしれないけど、
自分の中では結構な時間白いものはそうやってた。

で、ゆっくりとした動きで元の形に戻ると、
また滑るようにしてどこかへ行った。

でも、すぐに降りるのもしゃべるのも怖くてできなくて、
皆ずっと同じ姿勢で固まってた。

で、Bがポケットん中から飴?かなんかを取り出して、
ぽいってそいつの消えた方向に放り投げたんだ。

でも、なんの反応もなかった。

ちょっと待ってからまた同じように放り投げて、
何の反応もないのを確かめてから、

枝にロープを巻きつけてすぐに登れるようにして、
ゆっくり降り出した。

で、地面に降りてからまた放り投げて、
こっちに手を振ってきた。

大丈夫そうだから、
一応Bにならってロープを枝に巻いてから皆木を降りた。

しばらく誰も話さずに白いものの消えた方を見たけど、
もう何もないようなんで急いで荷物をまとめてからロープを解いて、
寄宿舎にダッシュで帰った。

引率の先生や樵の人に聞いたけど、
白いものに関しては何も知らないと言われた。

とりあえず山を降りるまでとにかく怖くて、
できるだけ皆と一緒にいた。

トイレも連れション。

窓の外も怖くて見れなかったな。

結局なんだかよくわからなかったけど、怖かった話。